2002.07.10読売新聞より
徳山市櫛ケ浜の若手地域活性化グループ「華雲塾」(青木義雄塾長)を中心に、江戸時代に長崎でオランダ船を引き揚げた郷土の偉人、村井喜右衛門を顕彰する動きが広がっている。同市立中央図書館では9日から、メンバーが撮影した写真などで喜右衛門の足跡をたどる展示会が始まった。
喜右衛門は1752年、櫛ケ浜村に生まれた。現在の長崎県香焼町で、イワシ漁の網元をしていた1798年、沖合でオランダ船エリザ号が沈没。喜右衛門は翌年、私財500両を投じ、小舟で沈没船を取り囲み、風や潮の干満、滑車を利用し引き揚げに成功した。喜右衛門の名前と引き揚げの技術は、欧米にまで知られ、米国のペリーも来航時に話題にしたという。この功績で名字帯刀を許され、銀30枚、酒や白砂糖を手にした。
を聞く村井さん(左から2人目)ら |
香焼町では、紙芝居や人形劇を通じ、喜右衛門の偉業が語り継がれている。しかし、郷土の徳山市では、知らない人が多く、同塾で顕彰に取り組むことにした。まず紙芝居を作り、6月に完成披露会を開いた。喜右衛門の子孫・村井周作さん(73)が絵をかき、10部を作った。「生まれ故郷で、(喜右衛門が)評価されることはうれしい」と村井さんも喜んでいる。
今回の展示会は、メンバーの会社員浜田心仁さん(38)が、3月に香焼町を訪ねて撮影した写真28点が中心。沈没地点の長崎湾高鉾島周辺や長崎奉行所跡などが並んでいる。このほか香焼町の喜右衛門人形や、図書館所蔵の引き揚げ再現模型など。14日まで。
地元ではこのほか、造り酒屋が日本酒の大吟醸「喜右衛門」を発売したり、引き揚げを題材にした歌舞伎公演が計画されている。青木さん(38)は「香焼町で写真展を開くなど、市民レベルで交流をしていきたい」と話している。